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「見て。海の色とも一体となってる」
丘のてっぺんくらいに差しかかると、美沙は遠くを指さした。
「ああ、ほんとだ。すごい。空と海と花の丘が同じ色で溶け合ってる!」
僕は興奮して叫んだ。海風が心地よい。
こんな景色が見られるとは思ってもみなかった。最高にいい気分だ。美沙は満足げな笑みを向ける。僕も自然に表情がほころんでいた。
「あの、いいですか」
不意に声をかけられた。見ると、若いカップルがスマホを僕たちに差し出していた。語調や雰囲気から、外国人であることが分かった。中国人か、韓国人だろう。
「OK」
僕は言ってスマホのカメラを構えた。二人に、「もう少し右、あっと左」とジェスチュアで合図しながら、ちょうどいい構図に二人をおさめた。
何枚か写真を撮る。
二人はその画像を見てはしゃいだ。
「ねえ、私たちも撮ってもらおうよ」
美沙が言った。外国人の二人もそのつもりだったらしく、僕のスマホをすんなり受け取ってくれた。
すまし顔を作って、美沙と並ぶ。男の方が、カメラを向けながら、やはりジェスチュアで僕らを動かす。
そしてシャッターが切られた。
写真は素晴らしい写りだった。僕たちはお礼を言って、この異国のカップルと笑顔で別れた。
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