プロローグ

1/1
前へ
/4ページ
次へ

プロローグ

 社会人2年目の春。私、市原有香はあることに悩んでいた。 『お金がない』  オタク趣味の私は会社の帰りに週3日はアニメ専門店に行き、グッズを買っていた。自宅はそのグッズ達に埋もれていた。そんな生活を続けていたらお金 が無くなるのも当然の話だ。 「今月の給料日まで10日あるのに口座に1万円しか入ってないのキツイなぁ」  社会人になって何度目かわからないセリフを銀行ATMの前で私は呟いた。自炊スキル0の私にとって食事は基本出来合いのものをスーパーで買うしかなかった。1日あたり1000円で栄養バランスを考えた食事はなかなか難しい。 偏った食生活を送ってしまっている。 「あっ、今日木曜じゃん。『ホーリーポジション』始まっちゃうから早く帰らなきゃ」  スーパーに行って買い物することよりアニメを見ることが私にとっての優先事項だった。私はなけなしの10日分の生活費1万円を下ろして急いで自宅へ向かった。 『ピピピーピピピーピピピー』 忘れ去られたキャッシュカードを知らせるアラート音が響いていたが、イヤホンで推し曲を聴いていた私が気づく由もなかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加