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――人に指をさしてはいけません。
ジャックは生まれてから、一度もこの文言を破った事はない。
いや、一度もというのは正確ではない。ジャックが2歳の頃、遠くにみえた猫を指さした事があった。一緒にいた父親は無言で彼の指をへし折り、二度と誤ちを犯すなと言った。
"死出の指さし"と言う名の呪いらしい。ジャックに指をさされた者は命に嫌われる。直接的な死とは違うとかなんだとか。
「どんな理由であれ僕は死ぬまでこの力を使う事はない。君がどうして僕の力を知って、どうやってここまで来たのかなんて事はどうでもいい。もう帰ってくれないか」
ジャックの死んだような目をみて、ドミニクは申し訳無い気持ちになった。ドミニクが彼を頼りたい理由があるのと同じで、また彼にもどんな理由であれ力を使えない理由があるのだ。
ドミニクは帰ろうとジャックに背を向けた。
ジャックは異変に気付く。
ドミニクのフードに猫が入っている。しかも、めちゃくちゃジャックを睨んでいる。
「貴様、人でなしじゃのぅ」
そして、喋った。
「わ!着いてきたのかい?!」
ドミニクはごめんねとソソクサと帰ろうとするが、ジャックは未だ睨んでくる猫に多少イラつきはじめる。
「何か文句でもあるのか、猫」
「チシャと呼べ人でなし」
「僕はジャックだ」
睨み合う1匹と1人。ドミニクがアタフタしているとチシャは喋り出した。
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