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教室から覗く空は徐々に茜色に染まっていく。少し開いた窓から入る風が、カーテンを揺らす。
「これが俺の気持ちです!!」
そう言って一人の少年は目の前の女の子に小さな花束を差し出した。ラッピングされたピンクの花が夕陽に照らされ、輝いていた。
誰もいない放課後の教室での、この状況、誰が見ても分かる。この少年は彼女に告白したのだ。好きだと言葉にするのは恥ずかしいから、花をプレゼントしよう。これなら、彼女も分かってくれる。少年はそう思っていた。恐る恐る、彼女の表情を伺う。
彼女は初めは驚いた表情を見せたが、花を見るとその表情を曇らせた。悲しそうに見つめ、手で口元を覆う。
「…?えっと…」
少年は訳が分からずうろたえる。ごめんなさいと言われる覚悟は辛いがしていた。だが、この表情は予想していなかった。
彼女はわなわなと、震えながら、
「ゴッ…、ゴボウ!」
そう叫んで、教室を飛び出した。すぐに教室に静寂が訪れた。
「…え?」
残された少年の行き場を失った花が、風で少し揺れた。
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