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Introduction
「──刹那は知ってるのかな? 僕と君の事」
とあるホテルのラウンジにて。
欲張って何種類も貰って来てしまったブライダルカタログの横には、ブラックコーヒー2つと赤い的印がインパクトを与える煙草の箱。囲んでいるテーブルを賑わしているのは、彼が吸う煙草の一筋煙。
「ラッキーストライク」
美馬さん。貴方の匂いがします。
「知らないと、思います」
「そう、いいの? 刹那と君は前に」
「美馬さんにとって私は、ただの愛玩的な存在だったから──」
「それは僕が謝らなければいけないかな、本当に申し訳ない」
「雄志さんが謝ることない、燃え尽きちゃった私が悪いんです」
「瀬奈、よく聞いて。僕は刹那の代わりにはなれない、だけど君が望むならボロボロの瀬奈ごと包み込んでやろうと思ってる。もう大切なモノを失いたくない、君を生涯離さないよ」
雄志さんはどこまでも大人だ、そして優しく温かい愛を愛でられる男。でも実は飛び抜けた野心家。
貴方とは正反対のようでやっぱり似ています。
独立し現在町の不動産屋を営む、頼りない代表取締役、黒崎瀬奈27歳。
未来の旦那様とブライダルサロンを訪れた先で早速、後悔を思い出してしまう。
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