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「わ、解りました、千歩譲って私を愛してる事にしてみましょう。でも! 事情も知らされずに突き放されたり、気を惹く為だけに指輪見せつけられたり。こんな愛し方されたら私傷だらけになっちゃいますっ」
「もう傷だらけに見えるけど」
「っ──、誰の、せいで……」
いいえ、美馬さんに裏切られたからだけじゃない。ここ最近色々と重なり過ぎたのだ。ただ、そんな辛い時一番近くに居て欲しいって。誰よりも甘い言葉で慰めて欲しいって。それだけだったのに……
「瀬奈?」
「全然……掴めた心地がしないんですその愛──っ」
迎えに来てくれる約束は忘れられているし、いつの間にか結婚しちゃってるし、貴方の何を見て愛されてると感じたら良いのですか。
「こうしてまた会いに来てくれてとても嬉しいんですけど、今は美馬さんを好きな分だけ辛いんです」
例えば愛されていても、愛しくても、愛しいから。貴方を愛した一人のオンナとして、どうしても許せない「一つ」が存在するのだ。
抱くのをやめたその手は、目の前に戻って来た眼差しは、下から差し込むように私を窺う。
「何、どういうこと」
解っているつもりだ。美馬さんはどうでもいい子の為にこんな手の込んだ事をしないオトコだ。
それでも、手を差し伸べてくれさえすれば、確かなものがなくとも飛び付いてぶら下がる、以前のようなバイタリティはとてもなくて。その指輪が見えてしまう度、狂おしい欲求で胸が荒んでいくのです。
「さっきは助けてくれて感謝してるんです、土地を守る為に頑張ってくれてる事も、本当。だけど、もう……」
格段と膨れ上がった罪悪感を抱え切れない。会社も私も信用してくれている琴美さんに憎しみを抱いてしまいかねないと。指輪に目が留まっていたのだろう、美馬さんがそれを辿り当てるまで2秒と掛からなかった。
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