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【第1部-魅了-】夜のイタズラ
これらは貴方を手離す前、雄志さんと出会うもっと前、全てが始まった頃の話──それは聞かなかった事にしたい衝撃告白だった。
「それってそのー、んんー? 妹尾、さん?」
「そう言うおとぼけな所も可愛いんだけど実際退屈なんだよなぁ。
聞こえなかったみたいだからもう一度教えてあげる。瀬奈は床下手だって言ったのつまりマグロ!」
「あうっ」
店内のムードに則りどのカップルもひそひそ愛を深めている此処は、海水魚や人魚に扮した外人さんが水槽を泳ぐ、雰囲気重視のショットバー。
「折り入って話がある」と改まって呼び出す位だから別れ話だろうとある程度の予想はついたけど、そんな爆弾理由を大声で連呼しなくてもよいと思われ。
「でも妹尾さん〝俺に任せておけばいいよ、可愛いよ〟って毎回言ってくれ」
「最初だから恥ずかしがってるだけだと思ってたんだよ。そんなのお世辞に決まってんじゃん、お世辞で愛を埋められるのは3ヶ月が限度。
男はさ、瀬奈みたいな男慣れしてない女の子が実は夜スゴいとかを期待してるわけ。なのにな~3ヶ月経ってもギャップが無いんだよギャップが」
「あうぅっ」
──そんなぁ、私ってその程度で幻滅されちゃう位の存在だったの?
期待されても困っちゃうよ、て言うより私マグロだったんだ知らなかったよ。フラレてる事よりそっちの方がよほどショッキング。
同じ社の不動産管理部の先輩、妹尾さんとは丁度3ヶ月前に熱烈な告白をされお付き合いを始めた。後輩の面倒見が良く頼り甲斐のあるお兄さん的な存在で、多少なりとも惹かれる所があったから夜のお供だってした、それなのに。
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