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「もっと楽しませてくれる女だと思ったよ、濡れないし喘がないし挿れてもヤった気がしないしつまんない退屈」
──女の価値を見失う痛恨のダメージ。
「夜の私が?」
「それ以外何があんの?」
こんな言い方ってない。カラダ目的でしかなかったと言われたようなものだし、怒る権利だってあった。でも大事な事を2回言っちゃうクセがある妹尾さんに痛恨の特大ダメージを頂戴してしまう。
「別れよう」とも言わず私に理解を求めた彼は卑怯だ、ギャップギャップ言うけれど妹尾さんこそ付き合う前と対応が全然違う。
「誕生日に貰ったタイピン返しとくわ。すげ気に入ってるんだけどね、じゃ」
1ヶ月前はホテルのルームキーだったものが、スッと今テーブル上に差し出されたものは「別れよう」のサイン。それでも不思議と寂しさはなく、恥ずかしさで瞳が潤む。
だってみんな私を見てる、多分冷ややかな目で。
不動産コンサル会社「株式会社プラチナコンサルティング」に勤務するしがないOL、黒崎瀬奈。男にフラレた挙句恥ずかしい弱点を大声で指摘され、店内のお客様方に大注目を浴びている私、ぼっちなう。
──恥ずかしすぎて顔を上げられません……。
「──お客様、あちらの男性からお客様にと」
「わ、私に、ですか?」
幸か不幸か、バーテンダーの美男子が可哀想な私を慰めに来てくれたようだった。
持ち主の居なくなったタイピンをそっと退け、前に置かれたウォッカベースのオレンジジュース入り、スクリュードライバー。
見知らぬ人にまで憐れまれる私がちょっぴり不憫だけど、ここは有り難くその気持ちを受け取るべき?
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