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そうきたか!
「お金がないんじゃ、子供作れないよね」
「え?」
ココアを淹れてきてくれた母がフリーズするようなコメントを娘がした。
小学生女児は、母が趣味で参加しているSNSのサイトに見入っていた。
「だってさー、金○マなきゃだめじゃん。精子できないじゃん」
じょうきげんでココアを飲む娘のコメントを理解して、母は説明した。
「これはね、おかね、だよ。おきん、じゃないよ」
「えー、そうなんだ! こないだ学校で習った金タ○じゃないんだね」
「あんたね、その言葉あんま言わないの。レディはそう云うもの」
「はーい」
マウスカチカチ、クリック、トラックボールをクリクリ、ココアと手作りクッキー、それから沢山の小説を、親子は楽しんだ。
家事全部終わった、おうちごはんの昆布茶パスタもおいしかった。
今日の宿題全部終わった、パスタ上手に茹でられた。
その日のノルマを終えた親子は、とってもイイ感じの昼下がりを満喫していた。
本が好きな娘は、文章を書くのが趣味な母を尊敬している。
母も、娘が本好きで好奇心が強いのをとても良いと思っていた。
だから悩んでいた。
ただの小説書きでなく、BLも読み書きたしなむ腐界の住人であることを、いつカムアウトしようか? と。
や、そんなこと墓の下まで持って行けばよくね?
や、理解ある娘だもの、いっそバラして一緒に腐る?
腐界は楽しいぞー、いちど知ったらもう戻れないぞー。
あ?
やべェ、そこそこの英才教育に自信がある自分が怖い。
「おかーさん、どしたの?」
娘はPCと様子がおかしい母とを交互にちらちら見ている。
「や、なんでもさ。あ、ほら、あんたの好きな作家さん、今更新入った」
「あ、わー! なに? こんど何かわいいの?」
それは現役女子高生の日常エッセイで、変なふうに世紀末的な自己陶酔をひきずっておらず、きちんときらきらの毎日をおくっていることが気持ちいい作品だった。
娘はきゃっきゃと読んでいる。
母はココアを飲みきった。
窓の外、ほんわか晴れた空に目線を投じ、物思いにふける。
教育と訓練と調教と云うモノとヒトとについて考えていた。
情報に溢れすぎるこの世界で、自分を守るには予備知識を蓄えることが必要と、性教育も低年齢化してきた。
が、子供の純真さはいつまでも変わらない
だからこそ、そう。
認めてほしいものだな、自分自身の若さゆえの無知と云うものを。
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