花咲病の君。

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「どうして、白石さんは……笑わないの?」 大学の授業が終わり一人とぼとぼ帰ろうかなんて考えていた帰り際に見かけた友達以上恋人未満の君のその姿を追って、俺は君の隣でそう呟いた。 俺の存在に気がついた君はゆっくりと振り返ると、君の首筋から頭にかけて咲く小さな花達が風に吹かれては気持ちよさそうに体を揺らす。 花咲き病ーー奇病と呼ばれるその病がありながらも、君はこうやって俺と、俺達と何ら変わらない生活を送っている。 命の期限はよく分からなくて、長生きする人もいれば俺と同じぐらいで亡くなる人もいる。 そうネットで調べた記事には書いてあったけど、身内にその病を抱えた人がいるわけでもなくて、全然どんな病なのか俺は知らない。 「桐生(きりゅう)くん、は……私のことを不気味だとか思わないの?」 俺の質問には答えないで、君は俺にそう問いてきた。 君の揺れるその花と、君の横顔を見て俺はこくんと一つ頷いた。 「不気味だなんて一回も思ったことない。……むしろ綺麗だと思う」 素直にそう言うと、君の花が一つ芽吹いた。 夕焼け色に染まっていく空と同じ色の、綺麗な花が、真っ赤な菊の花が咲き誇った。 ドクンと一つ心臓が跳ねたかと思えば、全身を駆け巡る血液が騒ぐ。
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