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弱体化する人類を抱える地球でひどく注目されているのが臓器移植について。
俺のような臓器移植希望者はごまんといるが、
実際に移植を受けられるのはほんの一握りだ。
そんな状況をみて、この国の政府は3年前、新たな制度を創り出した。
それを『生前臓器讓渡・移植制度』という。
従来は移植に同意する人が、脳死後及び心臓が停止した死後に、提供者となっていた。
しかしそれとは全く別の制度として、
今生きている人で、今すぐにでも臓器提供の意思がある人が臓器を讓渡する、という制度なのだ。
もちろん、心臓などの器官を提供した提供者に待つのは死である。
臓器移植希望者には健康な臓器を、死を望む人々には合法的な死を与えるというわけだ。
もちろん、その制度が発表され法も整備されてから様々な批判はやまなかったが、移植を望む人そして合法的に与えられる死に魅力を感じる人が多く存在しているからこそ、いまだこの制度は順調に利用され続けているのである。
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