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バッと顔をあげる
「………」
「君がボクの心臓を貰ってくれる人だね?」
そう言って俺の目の前で微笑むその人は……
とてもとても美しい、男の人だった。
思わずぼおっと見とれてしまう。
「もしかして、、、違った?」
さらさらの髪を揺らして彼は首を傾げた。
「あっ!すみません!その通りです。」
「あまりにもイケメンな方だったので…」
俺は慌てて立ち上がりあいさつを返す。慌てすぎて変なことを口走ってしまった。
「そんな急に動いたりして大丈夫…?いいから座って座って」
「すみません…」
俺を座らせるとその人はそっと向かいに座った。
改めてみてもホントにかっこいい人だ。たとえ芸能人だといわれても何の疑問もない。
整った顔に抜群のスタイル、身なりを見るにお金にも困ってはいないだろう。
こんな人が提供者になりたがってる?何かの間違いなんじゃ…?
でもその顔に確かに底なしに深い憂いがあるように見えるのは先入観ゆえだろうか。
それに、身を包んでいる服達も素人目にもお高いものだとわかるものだが、それらすべて上着から足先まで真っ黒である事に気付き少しだけ胸が不穏な音をたてた。
でも提供を決めた理由、とか聞いてもいいんだろうか…なんで死ぬんですかって聞くようなもんだもんな…やっぱり失礼だろうか…
そんなことをぐるぐる考えていると目の前の彼と目が合った。
そしてふっと微笑まれて、それがあまりにも輝いてて…
ポロッとこぼれてしまった。
「…なんで臓器提供したいんですか」
……俺は阿呆か??
しかし彼はほとんど動じることなく微かに眉をあげただけだった。
「そうだねえ…
せっかくの機会だけどボクの話を延々としていいもんなのかなあ」
「貴方がいいのならぜひ聞きたいですけど…」
「そっか。じゃあもっとリラックスして?
『俺』も『ボク』なんて気恥ずかしくなってきたから普通に話すよ
それじゃあ少し長くなるけど聞いてくれる?」
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