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コツッコツッコッ 磨かれた床に自分の足音が良く響く。 ガチャッ 目の前の扉を開けて覗くが中は真っ暗。 「ここにもいない、か」 でかい溜息をひとつ。 おれは、塩沢 雪惟(しおざわ ゆきただ)。 職業、いわゆるマネージャー。 今日も担当のモデルについてこのスタジオまでやってきて一仕事おわったところだ。 が!しかし、だ。 なぜかおれはその一緒にいたはずのモデルを捜索中である。 撮影を終え、片付けや本人の着替えも終わりスタッフさんと細々とした打合せをして、さあ帰ろうと振り向くとどこにも彼はいなかったわけだ。 普段あまりないことなだけに少し焦る気持ちを抑えながらスタジオの扉をめざす。 打合せなどにつかう小さめの部屋はまわりきってしまったので撮影スタジオをひとつひとつ見ていくしかない。 (といっても撮影してる部屋ばっかなんだけど…) 1番近くのスタジオの前に立つ。 「失礼いたします…」 小声で声を掛けつつ扉を開け中を見渡す。 (……‼) 思わずため息がでそうになった。 (こんなとこにはいないだろうと思ってたのになあ) そっと中にすべりこみつかつかと目的の背中まで歩を進める。 ガッ!とその腕をつかむと バッとそいつが振り向いた。 西邑 隼人(にしむら はやと) 職業、モデル。
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