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「母さん、今までありがとう」
そう。
明日は晴れの門出の日。
ここで一緒に過ごす最後の夜。
日色の守るべきものは、新しい家族へと変わるのだ。
嬉しいはずなのに、でも、やっぱり寂しい。
目を閉じると、日色と過ごした沢山の日々が思い出され、脳裏を埋め尽くす。
鼻の奥がツーンと痛くなった。
「幸せになるんだよ」
そう言うのが精一杯だった。
「母さん、これ…」
差し出されたのは、とても綺麗な花束。
ダリア、アスター、トルコキキョウ。
可憐な花達が、寂しい心を温めてくれる様な、そんな嬉しいプレゼントだった。
「ありがとう、綺麗ね」
たんぽぽの様な無邪気な笑顔は、もうそこにはないけれど、あの頃とは違う大人びた笑顔には、これからの未来を期待する、希望の光が宿っているように見えた。
そして「絶対幸せになるから」と言った一言が、とてもたくましく、まるで、踏まれても強く咲き続けるたんぽぽの様だと感じた。
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