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あの日の花束の、どの花にも日色の想いが込められていた事を、私は後になって知った。
「お義母さん、いつもありがとうございます」
義理の娘となった莉子ちゃんは、自分達の結婚記念日に、毎年私に花束を届けてくれる。
その花束は、あの日と同じ、ダリア、アスター、トルコキキョウの花束だ。
「毎年ありがとうね、この花束も、もう五回目ね」
「お義母さんには、いつも瑞輝の面倒を見て貰ってるから、ほんの感謝の印です。それに、この花束はヒロくんの想いそのものですから」
そう言って笑う莉子ちゃんは、まるでコスモスの様。
可憐だけど、力強い。
「あの花束、結婚式の前日にヒロくんが花言葉を調べて、お義母さんの事を想って、お花屋さんで長い時間悩んでいたんですよ」
この花束にそんなエピソードがあったなんて…
「ダリアは感謝、アスターとトルコキキョウはあなたを想うって言う花言葉があるんです」
五年もの月日が流れ、始めて知る息子の想いに、目頭が熱くなった。
「年を取ると涙脆くて嫌になっちゃうわね」
流れそうになる涙を、下手な笑顔でごまかそうとしたけど、簡単には出来なかった。
「言葉では照れ臭くて言えないからって、花束に想いを込めたんです」
日色の想いを今になって知った。
我が子ながら優しい子に育ってくれた事が、とても誇らしく思えた。
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