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『____こんなこと、もう終わりにしよう』
その日は、例年にしては珍しいほど雪が降り積もっていた
築10年の7階建て
その、ある一室
暖房と先程までの情事を表すような熱気がぐちゃぐちゃに篭った部屋で、ベッドに腰掛けた人はそう呟いた
揺蕩う煙のように消えていった言葉に、ベッドに寝転がったまま薄暗い天井をただぼんやり見つめるもう1人の青年は、少し可笑しそうに、そしてその奥に苦しさを隠すように小さく笑った
「そうだね」
"いやだ"
「もう、終わりにしようか」
"終わりたくない"
シンと静まり返る部屋に響くのは、ベッドに腰掛けていた青年が衣服を身に纏う音だけ
そして、鞄を肩にかけ未だベッドに寝転ぶ青年を振り返った
『..ごめんね、ありがとう』
パタンと閉じる扉の音
それがひどく冷たい音に聞こえた
ごめんね、なんて
ありがとう、だなんて
そんなもの聞きたくなかった
俺が聞きたかったのは
「____ねえ、結月さん」
好きだよ
ただ、あなたの側に居たかった
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