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土曜日の駅前。
「よし。時間前に着けた。」
前日から準備しておいた甲斐があって、約束の時間20分前に集合場所に到着した。
あとは一応響くんに着いた連絡を…。
「そこのお姉さん。俺と遊ばない?」
「へ?」
携帯に落としていた視線を声のするほうに向ける。と、そこには優しい笑顔でこちらを見る響くんの姿があった。
「え?!ひ、響くん?!」
「まさかこんな早くに来ると思わなかったよ」
「それこっちの台詞…!!」
思いがけない登場に、一気に心が沸騰した。
普段よく、制服姿と部屋着姿は見ていた。けど今日の響くんはその時とは違う雰囲気を醸し出している。
いつもは「軽くセットしているだけ」と言っていた髪が、今日はしっかりセットされていて、服も黒基調にまとめられているからいつもより大人っぽく見える。
ふと、響くんの背後に目を向けるとすれ違う人たち(主に女の子)がチラチラとこちらを見ているのがわかる。
「どうした?…あー、もしかして服、変?」
「ち、ちがう!!むしろその…か、かっこいい、よ…」
ぶわぁっと顔に熱が集まるのがすごくよくわかる。
なんだか恥ずかしくて、目を顔を、向けることが出来ない。
どうしようと俯いていると、するりと顎の方に手が滑ってきてそっと上を向かされた。
目の前にはキラキラとした響くんの顔があって、耳の方にも熱が渡る。
「ほんと反則。琴乃は今日も可愛いな」
「ひぇぇ…っ」
変な声。と笑った響くん。
その笑顔に心臓が痛いほど締め付けられるのは、何でだろう。
「今日はよろしくな?」
「こ…こちらこそ……」
今日、色んな意味で死んでしまうのではないかと思った瞬間だった。
「それで?今日の行き先は任せていいんだっけ?」
「う、うん!!私がエスコートする!」
そういうと嬉しそうに笑って、「じゃあよろしくお願いします」と言った響くんに繋がれた手にギュッと力が籠った。
指と指が絡まるつなぎ方は、いつも二人の時と変わらない。
けれど…今日は何故か緊張する…!!!
「琴乃?どうした?」
「ううん…なんか、いつもと違うから、緊張して」
「そんなに違う?」
「いつも制服か部屋着だから、不思議な感じがするの」
それもそうか。と笑う響くんにつられて私も笑う。
なんか、いいなぁ。すごく落ち着く、安心する。何だかわくわくする。
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