番外編-彼を知る彼女のこと-

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放課後。 咲と途中まで一緒に帰った。 道すがら、「琴乃のこと応援してるから!」と励ましてくれて心が落ち着いた。 逃げてたらダメだ。たとえ、もう他に好きな人ができたのだとしても、この気持ちは伝えたい。 「とにかく、謝らないと…。」 でもどうやって…メッセージ送って謝る…のは何か失礼な気も…。 携帯を片手にううーん、と考えていると家が見えてきた。 その前には人影がある。まだ少し距離が合って誰かはわからない。 もしかして祐樹…?また鍵忘れたとか?? それを懸念して、少し早足に家を目指した。 「祐樹ー?また鍵忘れたの……っ!」 「あ…おかえり、琴乃」 家の前に居たのはつい先程までメッセージを送ろうかと悩んでいた彼で。 目を合わせた後は少し困ったように笑う響くん。 「祐樹なら中にいるよ。」 「ご、ごめん、間違えて…」 思わず顔をそらす。 申し訳なさと恥ずかしさが募っていく。 少しだけ間が空いて、響くんとの距離が近くなった。 ど、どうしよう…。気持ちの整理はついたとはいえ、心の準備はできていない。 「あー…えっと…祐樹と遊んで行ったら…?」 う、逃げてしまった。 謝るのが先でしょうが!!!と頭ではわかっているものの上手く声に出せない。 「それは、また今度」 「え…?わっ」 くいっと腕を引かれて、響くんの胸に頭をぶつけた。 ごめん!!と体を離そうとすると、今度はすっぽりと両腕の中に仕舞われてしまう。 ドクドクと脈打つ音が間近に聞こえて、釣られるように自分の心音も早くなる。 「琴乃」 「な、何…?」 「ごめん」 え? 突然の謝罪に驚いて顔を上げる。 それと同時に近づいた響くん。 「んっ!」 後頭部を掌で固定されて、唇を響くんので塞がれる。 少しくっついて、離れたと思ったら今度は深く口付けられ、体が震えた。 色々思うところあるんだけどまず先にここは往来!!!道!!!家の前!!!!! 「んんっ!んー!!」 バシバシと響くんの背中をたたく。 するとチュゥッと唇を吸って離れていく熱。 響くんを見ると悲しそうな表情をしていて、胸が締め付けられた。 「っここ、じゃダメだから、来て」
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