番外編-彼を知る彼女のこと-

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「落ち着いた?」 「…うん」 その後はもう本当に、見るも無残なほどの泣き顔を晒し、落ち着くまで一緒に居てもらうという醜態。 ほんと…穴があったら入りたい……。 借りたハンカチで目を覆いながら恥ずかしさの余り俯く。 響くんが何かしている音がして、少し後に名前を呼ばれてそちらを向く。 これ。と見せてくれたのは響くんの左薬指にはまった指輪。 シルバーで、よく見るとデザインが私がつけているものと同じだと気づいた。 「ペアリング…」 「そう。着けてても、いい?」 こちらを伺う様子に心がきゅんと鳴る。 いっぱい考えてくれていることがわかる。そしてその優しい心が堪らなく好きだ。 ぶんぶんと首を縦に振ると、「よかった」とどこか照れ臭そうに笑った。 「すっげドキドキした…てか、ごめんな?サプライズにしたくて。誤解させちゃったな」 「ううん、勝手に勘違いしちゃったの私だから!ほんと、ごめんなさい」 「…あーもう、むり、可愛い」 「わっ!」 ぎゅうう、と抱きしめられる。 ままま、待って!心臓もたないから…!!! 自分の気持ちを自覚した途端に溢れてくる感情に鼓動が早くなる。 「琴乃」 「な、なに…?」 「一緒に居たい」 「ぅ…!」 甘えるかのように首筋に頬を摺り寄せてくる響くん。 か、可愛い…! 「琴乃、選んで?」 「へ?」 「今日、この後多分、朝も離してあげられないから。でも、今ならまだ我慢できるから…。」 我慢できる。 その言葉は心なしか弱弱しくて、 行かないでと言われている気がした。 そんなこと言われても…私の方が、離れたくない。 響くんの背中に手を回して、力を込めてくっつく。 「琴乃…?」 「わ、私も、一緒に居たい…」 ごくり、と息をのむ音がしたと思ったそのすぐ後。 「んっ!!」 耳たぶを食む様な柔らかい感触と、熱が伝わる。 「ひ、響く…!」 「っはー……明日、学校行けなくても許して」 「?!!」 おしまい。
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