番外編-彼のこと-

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番外編-彼のこと-

男子校侵入から数日後のこと。 「やーーっぱり何かあったよねぇ?」 「う…」 詰め寄ってくるのは友人の咲。 中学からの付き合いで、高校三年間はずっと同じクラスだった。 そして何を問い詰められているのかというと、 「何かツヤっとしてるし?最近変に上の空だし、忘れ物も多いし?」 「うっ」 「あと放課後そそくさ帰ってるわよねぇ??」 「ううっ」 全てご名答で、ぐうの音も出ない。 あの男子校侵入事件(?)からというもの、毎日のように響くんの送り迎えがあり、迎えに関しては高確率で家に連れ込まれて、その…よからぬ事を致しているわけで……。 だって…!!ダメって言っても聞いてくれないし!!き、気持ちよくなっちゃうし…?! おまけに人生で初めてのお付き合い。流れに流されて…みたいなところはあるけれど、それでも何だかムズムズする。 「ほーら、また何か考えてる」 「あっ。」 「あんた分かりやすすぎるの。で、何??彼氏でもできた??」 「へぁっ?!!!」 ガタンッ! 思わず動揺してしまい勢いよく後立ち上がってしまったものだから、教室にいたクラスメイトからの視線が痛い。 放課後の人の少ない時間だからまだよかったかもしれないけれど。 「え…え?嘘、ほんとに彼氏できたの…??」 「うう…一応…?」 えー!!嘘ーーーーーっ!!!と驚いた様子の咲。 同じく立ち上がってバッと私の手を掴む。 「誰?!どこのクラス?!てかそもそもうちの学校?!!」 「ちょっと、咲落ち着いて…」 「落ち着けるわけないじゃーーーん!!初カレだよね?おめでとーーー!!!」 きゃーーっと声を上げて私の手をブンブン振る。 その反応は嬉しいけど周囲の視線がかなり痛いよ咲…。 帰りカフェ行こう!詳しく聞かせて!!と息巻く咲にここで騒ぐよりはと承諾しようと思った時、ポッケの中のスマホが鳴った。 「電話来たから待って…」 手を放してもらい、スマホを取り出すと画面に映る名前に驚く。 【着信:響くん】 急いで操作して耳に当てる。 「も、もしもし?」 『あ、琴乃。学校お疲れ様。まだ学校?』 「え?うん、今教室だけど…」 『良かった。今日迎えいけないって行ったんだけど、委員会の仕事祐樹が変わってくれたからやっぱり行こうと思ってて』 「え?!い、いいよ!遠いし悪いし…」 『俺が会いたいんだけど、それでもダメ?』 うぐっ、と声が詰まった。 そう。そうだ。響くんのこういうところがズルいんだ…!! 年下とは思えない余裕のある感じというか、何枚も上手で叶う要素が見当たらないというか…!! 「だ、めじゃない…」 『良かった。近くなったらまた連絡するから。』 またあとで。と言い残し電話が切れた。 はあぁ…と暗くなった画面を見て息を吐く。 電話とは言え慣れない。響くんの声を聴くと心臓がドクドクと早く動き出すから。 何でだろう…と思いつつ振り返ると、そこにはニヤニヤしながらこちらを見る咲の姿が。 「なぁにー?もしかして、彼氏さんとー??」 「そ…そう!もーニヤニヤしないで!!」 ーーーーー。 「何か…ごめんね」 「ン?何が?」 あの後。 電話での事情を説明すると、 「カフェはいいって!また今度!!その代わりに、彼氏来るまで色々聞かせてもらうからね!」 ということで咲の質問攻めによって根掘り葉掘り聞かれ、響くんが来た際には私も見に行く!と一緒に校舎を出て響くんのところに向かうと彼の周囲は数名の女子で埋められ、一緒に来た咲も「は?何あの人顔面偏差値高すぎない?!!」とその女性陣に混ざっていってしまい…。 唖然としていたら輪の中から出てきた響くんに手を引かれて、退散してきたのだ。 「俺、男子校だからよくわからなかったけど、女子の勢いってすごいな」 「うう…みんながみんなそうではないので…」 恐らく多分…。 何だかいたたまれなくて視線を落とすと、響くんに繋がれた手が見えた。 私の手をすっぽりと覆ってしまいそうな大きな手と温もり。 それに気づいて、じわじわと顔の方も熱くなってくる。 これは所謂…世間一般で言うところの恋人つなぎ…!!! 「琴乃?聞いてる?」 「ぅあい?!!な、何でしょうか?!!」 やばい、完全に聞いてなかった…!!! 「ふっ。変な声」 「んなっ!?」 見上げると優しく笑う響くん。 その表情に胸がきゅんと締め付けられた。 …?きゅん? 「この後俺の家、寄ってもいい?って聞いたんだよ」 「あ…う、うん、だいじょぶ……」 良かった。と言ってまた前を向く響くん。 その横顔も綺麗で、女性陣に詰め寄られるのも頷けるし、私なんかが隣を歩いていていいものかと思う。 最近感じるこの胸がもやもやする感覚。一体何なのか…。 「何か考え事?」 「へっ?」 気づくと足は止まっていて、響くんの家の前まで来ていた。 そ、そんなに考え込んでたの私?! 「俺に言えないこと?」 「い、いや…ええと…」 言えなくはないけど言わなくてもいいと言いますか…。 返答が遅れると、ふーん。と口をついて、にっこりと笑う響くん。 そう、とても、にっこりと。 「琴乃は体に聞いたほうがはやいもんな…?」 「ひっ」 悪魔の微笑みのように。
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