番外編-彼のこと-

2/2
前へ
/29ページ
次へ
「あっ、あぁ!も、やだやだぁ!!」 「やだ?俺のこと全然放そうとしないのは琴乃の方だ、ろっ?」 「んにゃぁっ!!!」 流れるようにベッドに連れ込まれると同時に服の中に手が入り込んできて、 止めどない愛撫にここ数日ですっかり敏感になってしまった体は成す術なく溶かされてしまって。 気づいた時にはお互い一糸まとわぬ姿になっていて、あふれ出す蜜口に響くんの杭が打ち込まれて体が震えた。 何回も、何回も抜き差しされて、時々深く繋がって、気持ちよくて頭の中まで侵されるような感覚。 「可愛い、琴乃、気持ちいい?」 「んっ、ん、んうぅっ」 「どっち?中擦るのやめようか?」 「やぁ……きもちい、からぁ!」 時々意地悪してくる響くん。 そういう時、すごくエッチな顔で見つめられるから、なんだかすごく堪らない気持ちになる。 「琴乃?さっき何考えてたか、教える気になった?」 「うぅう…っ、ンっ」 「教えてくれなくてもいいけど…繋がったまま一緒に寝ることになるからな?」 「ふえぇ…っ?!」 ななななな、なん、何っっ?!! 高校生とは思えない発言にビクリと体が震える。 それを見て満足そうに笑う響くんが本能的に怖い…! 「今、ナカ締まった…もしかしてそっち希望だった?」 それじゃ交渉にならないか、なんて言う彼はほんとに悪魔なんじゃないかと思い始める。 「琴乃は可愛いな…あんまり意地悪したくないから、言いたくなったら言って?それまではゆっくりシてやるから。な…??」 「ひぇ…」 そのすぐ後。 激しかった律動がゆっくりしたものに変わって、イキそうでイケないもどかしい状況に追い詰められて、「なぁ、どうする?」と低く問われた時点で私の負けが決まったのだった。 「なんだ、そんなことか。」 解放されて、ヘロヘロになった私の体をタオルで入念に拭いてくれる響くんに先程問われたことを話した。 「だって…その、お付き合いまでがいきなりだったというか…なんていうか……。」 正直なところ、私自身はまだ響くんに恋愛感情を抱いているのかと言われるとピンとは来なくて。 求められるまま受け入れてしまい、沼の中のような、このままでいいのかなという気持ちがある。 その思いもぽつりと零すと、響くんが隣にきてこちらを見つめる。 「俺と離れたいの?」 「そ、そういうわけじゃないけど…私、はっきりしない癖にこのまま傍にいるのって、ダメだと思って…」 響くんにも悪い気がした。 好きだと言ってくれる相手に身を任せすぎているとも思う。 そう告げると「んー…」とつぶやいて何故か私の背中に腕を回し、ギュッと、密着するように抱きしめる響くん。 「え?!な、なに…?」 「琴乃はさ、祐樹が何回か友達連れて家に上げてたの、覚えてる?」 「え???」 何を急に…と思いつつもうん。と首を縦に振る。 確かに何度か祐樹の友達が遊びに来たのは覚えている。特に高校1年生の頃、仲良くなりたての友達を連れてきて楽しそうに遊んでいた。 「俺、その中にいたの。知ってる?」 「え。」 嘘だ。絶対嘘だ。 いつも来るメンバーは同じで、最近は来なくなったけど当時は結構顔を合わせていたし、それだけに今も覚えている。 その覚えている中に響くんの姿はない。 「嘘だよ、だって見かけたことないもん」 「んー…まあ、そうなるよな」 「???」 響くんが何を思っているのかがまったく見えない…。 んんー?と首をひねると後頭部にそっと響くんの掌が触れた。 「黒い髪の、メガネでちょっと太めの奴、覚えてる?」 「??うん。確か、香坂くんだっけ?」 よく覚えてんね、と笑った響くん。 「それ、1年の時の俺。」 「…え」 「ふはっ!!変な顔!」 いや。いやいやいやいや。変な顔にもなりますけど…?! 結構衝撃的な事実。その香坂くんとは、祐樹の友達ご一行の中の一人で、丸めのフォルムにまんまるメガネで、あのむさ苦しい男子高校生の中で唯一マイナスイオンを発してた男の子だ。 すごく控えめで、いつもお菓子のごみや使ったお皿をキッチンに下げに来て、決まって「ごちそうさまでした」と言ってくれたのが印象深い。 その香坂くんが、響くんと同一人物とは到底思えない。 「う、嘘だ」 「ほんとだよ。琴乃に一目惚れしてからどうやったら振り向いてもらえるか考えて、体鍛えてメガネやめて、祐樹に琴乃のタイプ聞きだしてもらってそうなれるように頑張った。」 「え?…あ。」 確かに、確かに過去に一回だけ祐樹に「姉ちゃんってどんな人がタイプなの?」って聞かれて、突然かつ弟から謎の質問に真面目に答えるのも恥ずかしかったので、丁度テレビでやっていたドラマのイケメン俳優を指さした…気がする。 「好きなタイプが俳優だって言われて結構焦った。絶対敵いっこないから」 「…なんか…ごめんなさい」 適当に指さした俳優のことをまさか情報として横流しされるとは思わなかった。…というか思うわけがない。 「いい。今ここに琴乃がいるからそれでいい。」 ちゅ。とおでこにキスを落とされて、そこにボっと熱が集まる。 「て、いう片思いがあるから、俺は。正直、流されてだとしても琴乃が俺に捕まっててくれるなら嬉しいから。他の事は気にしなくていいよ。」 「え、あ…ぅ……」 ちゅ、ちゅ。っと、おでこから目尻、頬、鼻の頭に口付けが落ちて、最後に口をちゅうっと吸われて離れていく。 優しい口付けに、胸が締め付けられる。 「それに、俺のことで少しでも悩んでくれたってことは、可能性大有りってことだろ?」 「そ、なの?」 「うん。だからもうしばらくは」 俺に食べられててね。 そう動いた口が再び私の口に、そっと、重なるのだった。 おしまい。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加