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プロローグ
――この世に「一目惚れなんてものが本当にあるとしたら,きっとあの出会いがそうなのだろう。
住む世界も趣味もまったく違う僕らが恋に落ちたキッカケは,間違いなくあの日の僕の一目惚れだった。
僕・西崎和斗と彼女・荒木紫織との出会いは,三年前の春まで遡る――。
中学に入って間もない頃の僕は,放課後毎日のように友達とくだらない話をしながら,学校近くの公園に寄り道をしていた。――彼女に出会ったあの日もそう。いつもと何も変わらない放課後の日常だと思っていた。
「――やっぱさ,学ランって肩こるよなー。オレ,制服はブレザーがよかったな」
「いやいや。俺は学ラン着れて嬉しいけどなー」
「学ランって今どきダサくねえ? 俺もブレザー派」
……なんて会話を友達二人としながら,この日もいつものように公園を突っ切ろうとしていた。
でも,その日はいつもとは違っていた。
「……なあ,なんか近くから楽器の音聞こえねえ?」
「えー? ……ああ,ホントだ。めっちゃ近いじゃん」
僕の耳に入ってきたのは弦楽器らしい音色。
それも,かなり近い場所から聞こえてくる。誰かが公園の中で弾いているらしいと分かった。
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