第一幕 序

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争うことをやめたければ、意思を全て同じものにすり替える必要がある。 些細な喧嘩も戦争も、目を(つむ)ることが出来ないのであれば、我々は物言わぬ人形になるべきだ。 しかし、我々はその事実を受け入れることは出来ない。 それは人、一人一人の意思が、我々の生そのものが"火種"であるからだ。 私は度重なる衝突の果てに既に声を失ってしまったけれど、人として生きていきたい我々は、その先に得るものを信じて、最期の瞬間まで自我の主張をやめてはいけない。 争いと言えば聞こえは悪いかもしれないが、それを無くして物語を語ることは出来ないとここに断言する。 我々がぶつかり合ったこの燃えるような意思を。 継承されゆくこの火種を。 後世に語り継ぐために、私という人が 今 筆を執ったのだ。
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