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いよいよ目でわかるくらいに数は減ってきた。
だが、俺達の手札も、もう心許ない。
「っ…!もっと手数がありゃあなぁ!」
魔眼を振るう腕も疲れてきている。
秋山も手塚も疲れが見え始め…。
「うわっ!」
「っ!」
目に入ったのは手甲を弾かれた城戸の姿。
そこを逃すほど物怪は甘くない。
「城戸!!」
刹那、臟に痛みが走り、視界が揺れて…霞んだ。
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何が起こったか数瞬判らなかった。
視界を覆うのは鮮やかな翠。
それは鏡が割れるような音と共にベージュに変わり、地に堕ちた。
「…っあああああ!」
喚き散らす子供のように、拳を振るい白い化物を殴り倒して倒れた木村に駆け寄る。
「おい…!木村…!木村!」
木村を抱いた手は、龍の赤では無い紅に濡れる。
手の震えが止まらない。
「おい…待てよ…「城戸…」
木村の言葉が俺の怯えを止めた。
「弱音なんざ吐いたら…カミナリ落としてやる…!」
「…!」
「お前は…会ったばかりの俺らにも…こんな状況でも優しかった…すげぇよなぁ…」
「なんだよ…それ…」
困惑する俺に木村は精一杯の笑顔を向ける。
その瞳はどこか満ち足りた様に見えた。
「俺を…心配…しようなんざ…100万年早ぇ…」
声はどんどん弱くなっていく。
なのに木村の顔は安らかになっていく。
何故だろう…。
その答えは…
「お前を守れたんなら…俺ァ、満足だ…」
目もほとんど開いていない。
口からは一筋の鮮血が洩れている。
「…最後に、お前らとビール飲みたかったなぁ…。」
その一言を遺し
「木村…っ!木村ぁぁぁぁあっ!」
木村は俺の手の中で消えた。
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