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「手出しをするなと言わなかったか…?」
リュウガの不服そうな言葉に、白騎士は告げる。
「やられかけたお前を救ったつもりだったんだが違ったか?」
面白くなさそうにリュウガは距離を取る。
「…仕切り直しだ。凪川零。御前は退いてろ…!」
鏡像の冬摩刃は何故、凪川零との一対一を望むのだろうか。
不意に湧いた疑問に刃が揺れた。
「あっ…!」
その瞬間を邪魔者は見逃さなかった。
弾き飛ばされた剣は、私の背後遠くへ落とされ、そのまま奴の剣が私の胸を打つ。
「う…うぅうっ!」
無様に転がる私を鏡像は何を思うか、見ているだけだ。
「…殺れよ。君の為に彼女は此処に居るんだ。君の手で死なば、彼女も本望だろう?」
身体が動かない。
考えてみれば先程のダメージが一切癒えていないのだ。
「本当に…悪趣味ですね…!あなた達組織の人間は…」
「否定はしない。私はそういうのも好みだからな…」
「っっっ!この…下衆め…!」
「おいおい…お嬢様が吐く性質とは思えない暴言だな」
そんな会話が交わされていても、鏡像はそれを見ている。
私にはその手が微かに震えているように見えた。
「…おっと、無駄話が過ぎたな。殺れよ、望む形では無いかもしれないが、もう時間切れだ」
その言葉にゆっくりとこちらに向かって歩いてくる鏡像の手には黒刃。
先程それの犠牲になっていた銃士は既に何処ぞに消えている。
「残念だが…タイムリミットらしい…。」
私の頭蓋へと向けられる刃。
ああ、終わりか…。
幾多の戦いの果て、大切な人も救えず、無意味に死んでいくのか。
「はぁあ…っ!」
命を狩り取る者の声がする。
「ぐっ…!」
だが、死は一向に訪れなかった。
僅かに頭を起こした私が見たのは。
「ぐ…!何故だ…!」
振りかぶった刃を持つ手を、もう一方の手で抑え込む鏡像…否、冬摩刃の姿だった。
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