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「ああ、おいで」
「にゃー」
猫はおとなしく、エリザベスのもとに近寄り、足下に頬をすり寄せる。
「その猫はいったい……」
『わらわだ。面白そうなことをお主が考えていたから、猫になって見守ってやることにした』
『わらわもいるぞ。女神との戦いが終わり、今度は何をして退屈をしのごうと思っていたところだったが、女神と同じで、お主が面白そうだと思ってな。わらわも猫になることにした』
カナデのつぶやきに答えたのは、エリザベスではなかった。つい一か月前に、カナデたちをこの世界に残すと決めた、女神と悪魔の声だった。
「女神と悪魔……」
二人の声はカナデの脳内に直接響き渡った。聞き覚えのある声だったが、肝心の二人の姿が見当たらない。きょろきょろと辺りを見渡すカナデに、エリザベスが不審そうに見つめる。
「どうした?目覚めたばかりでまだ気分が悪いのか?」
「いえ、あの、エリザベス様、その猫は一体どこで拾ったのですか?」
「ホワイトとブラックのことか?この子たちは、カナデが倒れていたところにいたのだ。カナデを心配そうに見守っていたし、おとなしかったので、われが面倒を見ることにした」
いつの間にか白猫の他に、もう一匹の猫がその場に現れた。その猫は、白い猫とは対照的に、全身を真っ黒な毛におおわれ、瞳は血のような真っ赤な色をしていた。
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