永遠の愛

5/8
前へ
/13ページ
次へ
 そして、音葉と付き合って、三年が経とうとしていた。  ライブハウスのバイト。すっかり店長のお気に入りになってしまった音葉は、ソフトドリンクを片手にカウンターに座って、楽しそうにライブを聞いている。  店長が僕に声をかけてきた。 「次のアイツらなんだけど。ボーカルの女の子が、ブッチしたらしいんだ」  次の演奏は、ここの常連の奴ら。リーダは、僕の大学の同級生。 「ああ、あのワガママそうな女の子ですね」 「それでさ……、彼女……、歌わせてみない?」 「え??」  そう言って、店長がカウンターに座っていた音葉の方へ。音葉と話す店長。そして、僕に向かって手でオッケーサインを見せる。  ステージに立った音葉は、どこか神々しいオーラを放つ。それが、観客にも伝わったようで、一瞬会場は静まりかえる。軽く音合わせを始めると、しんとしていた会場が、徐々にざわつき始める。「誰、あの子?」「スゲー可愛くない?」 みんな口々に、音葉のビジュアルを評価している。  常連で、いつもトリを取るバンド。本来激しい曲調が売りの彼らだったが、音葉のイメージに合わせたのか、少し大人しめの曲調で一曲目を演奏し始めた。  バンドのメンバーが合わせているのか、音葉が合わせているのか、分からないけど、ずっとこのメンバーでやって来たかのようにピタリと息が合っている。観客たちも、いつもと違った感じで、バンドにシンクロしている。二曲目に入る頃には、誰もがすっかり音葉の虜になっているようだった。  そして、最後の曲を終える。割れんばかりの拍手と喝采。音葉とバンドメンバーを讃える声援とアンコールを要求する声。そんな中、音葉が静かにマイクを取る。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加