永遠のはじまり

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 その不審な人物は、漆黒のマントに身を包み、深々と被ったフードに顔を隠している。マントの隙間からは、酷く爛れた皺だらけの手がのぞき。その手には、魔力を漂わせた杖を握りしめている。  いったい何処から現れたのか。その人物は、迷わず王国の城内に足を踏み入れていく。警戒した兵士達が、その黒装束の人物を取り囲む。  そして、兵士の一人が歩み寄った瞬間……。漆黒のマントから暗黒魔法による黒い矢が放たれ、周りを取り囲む兵士達を貫いた。絶命する兵士達をその場に黒装束の人物は、更に城内の奥へ奥へと歩み続ける。  城内で起こった事件の知らせは、王と王妃メロディアの耳に入る。王と王妃は、高官たちと共に、城内の中央の庭園を見渡せる広間にいた。  異常事態に駆けつけた王直属の騎士たちが、広間に集まるのとほぼ同時に、暗黒魔法の爆煙が、庭園に続く正面の門を打ち破った。  庭園に足を踏み入れてきた黒装束の人物は、ここに至るまでに相当の力を使ったのか、足を引きずり、肩で息をしている。  ゆっくりと庭園の中腹まで歩み寄ってきた黒装束の人物を、騎士たちが取り囲んでゆく。  ここまで来て、もう観念したのか、黒装束の人物は歩みを止め、肩を揺らして、クククと笑う。そして、低い声で王に向かって言う。 「我が帝国を滅ぼし、新たにこの世界の王となった者よ……。そなたへの我が祝福の言葉、我が魂の最後の叫びを聞くがよい」  そして、漆黒のマントを翻し、両腕を広げ天空に伸ばす。手には魔力が漂う杖を握り締め、マントの中からはボロボロに破れた帝国高官が身につける衣装がのぞく。  数名の騎士がその人物に駆け寄り、両脇から肩を掴んで取り押さえる。そして、その場に膝をつかせ、顔を覆っていたフードを剥ぎ取る。
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