永遠のはじまり

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 フードを剥ぎ取られあらわになったのは、年老いた男。その顔は黒く爛れ、頰からは皮膚が削げおちている。しかし、まだ衰えぬ鋭い眼光で真っ直ぐに王を睨みつける。 「お前……、まさか……、生きていたのか……」  王が、かつての記憶を恐怖しながら呟く。王と王妃メロディアの眼前に現れたその男は、世界を恐怖に陥れた帝国最強の暗黒魔導師。 「主人(あるじ)亡き後、これが、我が最後の役目となる……。グゥ!!」  両肩を掴んだ騎士が、魔導師を地面にねじ伏せる。しかし、魔導師は顔を上げ、歯をむき出して話し続ける。 「お前に呪いをかける! この呪いは、お前が輪廻転生し、時空を超えようとも逃れることはできぬ!!」  魔導師が最後の力を振り絞り、上体を仰け反らせる。両脇を抑える騎士を振り払うように、手に持った杖を掲げ、渾身の力を込めて地面に突き刺す。 「永遠に苦しむがよい! お前の魂が生を受ける度、その生涯の中で最愛の人を、必ず失う運命となる!!」  地面に突き刺した杖の先端から、漆黒の闇が凄まじいスピードで伸びる。庭園の草木を黒く蝕み、空間には漆黒の闇が広がる。魔導師の体は、暗黒の噴煙と共に炭と化し、そのまま空間に漂い、地面に落ち、更に漆黒を広げる。  地を這う漆黒は、あらゆるものを覆い尽くしていく。そして、漂う黒煙は空間に広がり天空高く立ちのぼっていく。それはまるで、この国、この世界全てが闇に包まれていくかの様な光景。おののく高官と騎士たち。  辺りを覆い尽くした漆黒が、王の足元に忍び寄る。そして、王の足を伝い、全身を黒く染め上げてゆく。王妃メロディアが見つめる前で、王は漆黒に包まれ、その表情は生気を失っていく。漆黒は王の額に集まると帝国の紋章の形となり、スッと額の奥に消えていった。
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