永遠のはじまり

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 体を覆う漆黒が消え、まるで何事もなかったかの様に生気を取り戻した王。しかし、王妃メロディアと目があった瞬間。  ドクン!  今度は、王妃メロディアの体に異変が起きた。王の目の前で、王妃メロディアの顔が苦痛に歪む。胸を手で押さえ、よろめき倒れかけたところを、とっさに王が抱きかかえる。 「どうした!? メロディア!!」  苦痛に耐えながらも、気丈な瞳で王を見つめるメロディア。 「……帝国魔導師は……、あなたに暗黒の呪いをかけた。……そして、今この場で私の命を奪うことで、あなたの永遠の苦しみの始まりを……完成させようとしている……」  メロディアの口調は、はっきりとしているが、その表情は、みるみる血の気を失っていく。 「何を言っているんだ!? いいから、しゃべるな!」  王の悲痛の叫び。メロディアは、そんな王の頰にそっと手を添える。 「……もう……間に合わない。呪いは、魔導師の死と共に解き放たれた……」  覚悟を決めたメロディアの表情が不意に明るくなり、静かなメロディーを口ずさむ。愛する王の腕に抱かれ、メロディアの歌声が、あたりを包み込む。  首から下げた王家の紋章に埋め込まれた魔法石が歌声に共鳴し、七色の光を放つ。七色の光は暗黒の噴煙をかき分け、天空に向かってのびて行く。かき分けた隙間を更に広げるかのように、眩いばかりの太陽の日差しが天空から降り注ぐ。そして、メロディアの体から、アイヴィー家の象徴である美しい緑色の光沢のある小さな葉のついたツタが伸び始める。
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