永遠のはじまり

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 そのツタは、地を這い、庭園を埋め尽くし、城壁をつたい、あたり一面に伸びていく。そして、魔導師の張り巡らした漆黒を浄化していく。  メロディアは、その歌声と共に王の思考に直接語りかける。 「この力は、アイヴィー家に伝わる呪いと言われていた。その呪いの力は『死すともその魂は離れない』というもの。これは、恐ろしく、強力な力。でも本当は、呪いなんかじゃない……。  この力を私の歌で奏でる時、それは『永遠の愛』を誓う力へと変わる。今、私は力を使い、あなたへの誓いを立てる。最愛の人を失う運命となってしまったあなたを……、私の『永遠の愛』で守るために……」  メロディアの歌声がこだまする。 「あなたの記憶から、私はいなくなる。暗黒の呪いを成立させる為……、最愛の人を失った記憶とともに……」  その言葉の意味するところを噛み締め、涙する王。メロディアの美しいブルーの瞳を覗き込む。メロディアの瞳からも涙が溢れるが、その表情は優しく微笑んでいる。 「そんな……、嫌だ……、メロディア……。一生添い遂げると誓ったばかりじゃないか……、何故こんなことに……」  王は、メロディアを強く抱きしめる。その頰に軽く口づけをするメロディア。そして、王の耳元で囁く。 「私の記憶を失ったあなたは、必ず幸せになる。さようなら愛しい人……。私が歌を奏でる時、全ての記憶が幸せに包まれる。そして……、永遠の中でリセットされる……」 「待って! メロディア!! 君の居ない生涯なんて……、メロディアーーー!!」  神聖な歌声がこだまする中、この世界から一人の少女が消えた。
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