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音葉とつき合い出して、一年が過ぎた。正直、音葉の素性はよく分かっていない。時々、何の気なしに色々聞いてみるのだが、意味のわからない答えをする。僕としては、大学卒業と共に音葉との関係を真剣に……、とも考えている。
ライブハウスのバイトの後で音葉と会う約束をしていた。閉店になりバンドの連中も帰った後で、店長と二人で片付けに入る。
「外で女の子待ってるよ」
店長に言われて外に出ると、音葉が入り口に立っていた。店長に断って、清掃が終わるまでカウンターに座らせてもらうことにした。
僕と店長が清掃や片付けをしている間、音葉は大人しくカウンターに座っていた。そして、僕といる時みたいに、ハミングの様な歌を口ずさむ。
「おい……、あの子……。いい声だな……」
店長が、僕に囁く。店長は、えらく音葉のことが気に入ったらしく、僕のバイトの間、好きな時に来て、無料でカウンターに居ていいよ、などと言っていた。
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