テラリウム

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テラリウム

  部屋の外はここ数週間ずっと雨が降り続いている。  小雨程度ならまだ出掛ける気にもなるのだろうけど、ずっと矢が降るような勢いが続いているので、外に出ようと思わなくなった。  何もすることがなくぐうたらしている。  テーブルの上に積み重なった小説や漫画の類はだいたい読み終わって、数日間置きっぱなしになっている。映画を観るような習慣もなかった僕は、こういう時に時間を潰せる映像作品も無い。  ユーチューブで動画を眺めていてもどこか上の空で、何もしていなくても面白いことが頭の上から降ってこないだろうかと、ずっと待っているような状態だ。    何をするわけでもなく部屋の中を徘徊する。ぐるぐると回っているうちに何か思いつきそうな気がする。  時間は午後7時を過ぎて、外もすっかり暗くなっている。  窓際には本棚が置いてあって、その上のペン立てに数本のボールペン。隣には四角いガラス容器を使ったテラリウムを飾っている。ルービックキューブより少し大きいくらいのサイズ。本棚と窓との高さの違いで、ちょうどいい塩梅の光量になるのだ。  水を与えるための霧吹きはキッチンの隅に空っぽの状態で片付けてある。テラリウムの横に出しっぱなしにすると、つい余計な水やりをしてしまうからだ。  普段蓋は閉めていて、一度水をやるとしばらくの間は何もしない。昔、水をやり過ぎてカビが生えたことがあったため、それ以降は過保護にし過ぎないようにしている。  三日前に水はやったから今は特に世話をする必要もない。眺めているのが嫌というわけではないけれど、ずっと今の状況が続いた時に、他にやることがない! という事態に陥るのだけは避けたい。 「どうするかなぁ……」  テラリウムに語りかけるように呟く。答えなんてもちろん返ってこないし、静けさがやたら耳に響く。
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