Ah my mom and dad ......

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Ah my mom and dad ......

……ここは、何処だ?  海面に顔を出した如く、意識が覚醒した。  段々と風景に色が飾られていく。しかし周囲を見渡すには、視界がボヤけて不可能だ。    感覚的に、横になっていることは分かる。しかし首が動く気配はない。それ処か、身体の動作感覚が狂っているようだ。腰に力が入らない。  俺は死んだはずだった。魔王として、人神戦争の全責任を負い、自害したのがつい先程。失敗は考え難いが、現に意識がある。  俺は、死ぬことすら許されないのか?  この上なく悔しく、虚しかった。自然と涙が溢れる。嗚咽に留まらず、大声を出して泣いた。これほど感情を顕にするのは何時以来か?  不思議と感情が収まらない。泣き声は誰かを求めるようにトーンを上げる。  すると、突然体が軽くなった。ボヤけていた視界に女性の姿が映る。金髪が特徴的な美しい女性だ。彼女は俺を懐に包み込み、静かに腕を揺らした。  良い香りがする。遠い昔に体感した香りだ。落ち着く。日頃の苦心さえ忘れてしまいそうだ。  心地の良い歌声が耳に響く。これも懐かしい感覚を呼び覚ました。  何時聴いた?  どこで?  どうして?  懐古に更けた心が涙している一方で、俺は唇に幸福の笑みを浮かべていた。  そして、自然と両手が伸びる。不意に何かを求めてるようだ。  その先には柔らかい感触があった。探し物は“コレ“だと直感した。 温かく、柔らかく、良い香りのそれは、俺が数百年恋い焦がれた癒しそのものであった。  今一時は、この寛容性に身を委ねよう......  俺はその柔らかい物体を全身で受け止め、本能的に咥えた。
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