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いよいよ明日で1週間。
その前の日の夜、僕は眠れなかった。
何度も寝返りをうって、ぎゅっと目をつぶってみたり、
羊を数えたりしてみたけど駄目だった。
もうちょっと赤ちゃんの頃は、
パパが抱っこしてゆらゆらしてくれたり、
ママが隣でぽんぽんしてくれたりすれば、すぐに眠れたのに。
起き上がって、トイレに行こうと部屋を出た。
トイレから出ると、階段の下から、ママの大きな声がした。
「そんなの、勝手よ!」
パパが帰ってきてるのかな。
僕はそっと音がしないように階段の真ん中ぐらいまで降りてしゃがみこんだ。
パパの声もした。
「大きな声を出すなよ」
「だって、誰が育てたと思ってるの!せっかくここまで順調に来たのに、
優斗は私を選ぶに決まってるじゃない!」
「俺だって、育てただろ。優斗の学校だって塾だって、決めたのは俺だ。
優斗にはうちの会社を継いでもらわないと困る。
そのために高い学費を払って教養を身につけさせているのに」
「そんなの勝手よ!優斗の毎日の勉強を見たのは私よ!
うちの実家だって、後継が欲しいんだもの!優斗は優秀だから、うちの父だって離したくないわよ!」
「じゃあ君が離婚なんて言い出さなければよかったじゃないか。
そうすればこんな問題、今決めなくても良かったんだ」
「浮気をしたのはあなたでしょう!」
「だからそれの代償としてお金を払うんじゃないか。この家だって君のものだ。
それはもう話がついたことだろう」
「新しい女も、優秀な息子も欲しいなんてとんだ強欲男ね」
「君だって、金だけじゃなくて名誉と世間体ばかり欲しがる強欲女だ」
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