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  「良かったらいろんなこと教えてよ。学年も1個下になっちゃって高校2年なんだ。分かんないことばっかりになっちゃってさ」 「私も2年!」 「ほんと!? 僕は藤ノ宮高校だよ」 「ああ…… 私は野沢高校。あ、高原千里って言います。みんなチリって呼ぶけど」 「じゃ、チリちゃん。良かったら……たまに一緒に勉強しない?」 「私でいいんですか?」 「もちろん! 助かるよ! これからもここで会ってくれる?」 頷いたけど、ちょっと赤くなってたかもしれない。  後でお姉さんに聞いた。退院してから私のこと、ずっと待ってたんだって。『お散歩から帰って来たよ』、そう言いたいからって。  裕也と私は、それから何度も『Aznavour』でお喋りして、そしてデートにも行くようになった。大学は同じところを受験しよう、そう決めてずっと一緒に勉強した。  そして今、私たちは大学の園芸学部の学生。お父さんもお母さんも、すっかり裕也が気に入っていて、そして二人で園芸家になるんだと言ったら泣いて喜んでくれた。  今でもサギソウの季節になると、チィちゃんの笑顔が時々夢に出てくる。  私たちの右手の薬指に、お揃いの指輪が光るようになった。 『チリー、おめでとう!』  きっと今度の夢でそう言ってくれるね。 ――完――   
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