*☆*☆*☆*

2/10
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
   (写真見るのもいやだ)と思ったはずなのに。でもあの部屋を片付けちゃうなんて……  しょっちゅう潜り込んだベッド。横取りしてばっかりいたフーちゃん。あ、フーちゃんっていうのはフクロウのぬいぐるみのこと。こっそり拝借した洋服。チィちゃんの隠してた口紅。ペンダント、手鏡、アイドルのポスター、好きだった音楽の詰まったSDカード、たくさんの写真が入った携帯…… ――選ぶことなんか出来ないよ、チィちゃん……  どうしても欲しいものを選びながら、机の引き出しの中に小さい袋を見つけた。中には球根が3つ入っていた。袋に貼ってあるシールに書いてあるのは『サギソウ』。私はそれも一緒に自分の部屋に持って行った。チィちゃんが育てようと思ってたんだ、それが分っていたから。 『植物はただ水をやるだけじゃダメなのよ』  チィちゃんがいつも言ってた台詞。どうせ面倒なところはチィちゃんが全部やってくれる。だから私は水遣りしかしなかった。 『サギソウ』 <ラン科ハベナリア属 耐寒性球根>   後ろの方はどうでも良さそうな名前。要するに、サギソウね。裏に育て方が簡単に書いてある。鉢に植えるんだ。確か庭にチィちゃんの使い残しのプランターがあったはず。植えていいのは2月半ば? 今じゃない! ここまでは順調。水ゴケ、それから…… 「お母さん! 水ゴケってある!?」 大きな声にびっくりして父さんが出てきた。 「どうした、千里」 「これ」 球根と袋を見せた。 「サギソウか。水ゴケあるぞ。ちょっと待ってろ」  そうだった、チィちゃんが花を育てるのを好きだったのは父さんの影響だった。いつも父さんとああでもない、こうでもないと二人で庭でやってたっけ。   
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!