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  「あの! 聞きたいです、気になって仕方ないから」  見えたり消えたり。そりゃもう、幽霊としか考えられない! でも怖い幽霊さんじゃなさそう。 「そう? 怖くなったらごめんね」 私は横に首を振った。だって本当に気になる。 「いつも学校帰りとかちょっとした時にあの席でああやって座ってた。アイスコーヒー飲みながら私の帰りを待っていたり。両親とも亡くなって、私たちは二人だけ。去年の5月にね、ここの前で男の子が飛び出して車に轢かれそうになったのを裕也が助けたの。けど自分が撥ね飛ばされちゃって……」 「亡くなっちゃったんですか!?」  それじゃチィちゃんとおんなじだ…… 自転車に引っかけられたお婆ちゃんを助けようとして、反対側から来た車に轢かれたチィちゃん…… 運転手は携帯片手で前を見ていなかった。     お姉さんは首を横に振った。 「病院に搬送されてね、今でも眠ってるの。きっといつか目が覚めると思ってる」 じゃ、さっき見えたのは? 「なぜかしらね、ここにああやって来るようになったのよ。あの花が好きだから病院とここに去年の夏も飾ったの。店長さんが予約席にしましょって言ってくれたから。サギソウの花言葉はね、『夢の中でもいいから逢いたい』っていうのよ。だからかなぁ」 『夢の中でもいいから逢いたい』 だからチィちゃん、サギソウの育て方教えてくれてたの? 「裕也さん…… お散歩してるんじゃないですか?」 つい、そんな言葉が口から出ていた。 「お散歩?」 「きっと病院が退屈なんですよ。だからお姉さんのところにお散歩」 お姉さんがそばにしゃがんで私の手をぎゅっ! と握った。 「ありがとう。ありがとうね。そうね、お散歩ね」  二人でテーブルを振り返った。裕也さんが、白い花に手を添えてこっちを見てにこっと笑った。そして、ふわりと消えていった。   
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