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(久しぶりだー)
本屋さんにも来てなかった。買った参考書を持って、思い切って『Aznavour』に上って行った。
「こんにちはー」
小さい声で入っていった。間が空いてたからちょっと入りにくい……
「いらっしゃい!」
お姉さんだ! 良かった、元気な声。
「待ってたのよ、どうぞ」
「ごめんなさい、なかなか来れなくて……」
「いいのよ、気にしないで」
奥の端っこの席にサギソウが無い。もう時期は過ぎてるからだ。 他の花は置かないのかな?
「お姉さん、お花は何も置かないんですか?」
にこっと笑って指差したお姉さん。
「その奥を見て」
陰になってる奥を見たら裕也さんがいつもと同じように座ってた。でも…… 学生服じゃない。あったかそうなセーターにジーンズかな? 反対の席にジャンバーが置いてある………
「お散歩から帰って来たの! あなたのお蔭。本当にありがとう!」
帰って来た?
裕也さんが気がついたみたいで立ち上がってこっちに歩いてきた。あの優しい笑顔だ!
「初めまして。裕也です。でも、初めてじゃないよね。僕は覚えてるよ、君のこと」
「え?」
「あれからも何回か会ったね。いつも笑ってくれた。嬉しかった。姉さんと話してくれてありがとう、お散歩って言ってくれて。ちゃんと帰って来れたよ」
そんなことまで知ってるの?
「良かったら僕のテーブルに来ない?」
誘われるままにテーブルに座った。
「まだ幽霊みたいに見える?」
「ううん、すごく元気そう!」
「退院してまだ1ヶ月くらいなんだ。不思議だ、すごく懐かしく感じるよ」
「私も…… 夢みたい!」
「あの花を大切に育ててるって、なぜかな、分かったんだよ。ずっとちゃんと君に会いたいと思ってた。姉さんと君だけが暗い夢の中で見えたんだ」
チィちゃんのおかげだ……
『チリー、カッコいい人だねぇ』
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