釣り人

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釣り人

昔昔、あるところに浦島太郎が住んでいました。 彼の家の近くには大変綺麗な浜辺があった。 浦島は釣りが好きで毎日その浜の外れの岩場で釣りをしていた。 「今日こそ鯛を釣るぞ」 彼は釣糸を垂らすとひたすら釣れるのを待った。 そこに一人の女性が通りかかった。 「釣れますか?」 「いや~、釣れないですね」 女性はあるものを浦島太郎に差し出した。 「…これは?」 「これを餌にしてみて下さい 海老で鯛を釣ると言うでしょ」 女性はにっこりと笑って言った。 しかし、浦島は海老を受け取らなかった。 「昔、太公望と言う偉い人が餌を付けずに魚を釣り上げたと云います 私も釣り人として、そんな偉業を成し遂げてみたいんですよ」 浦島は誇らしげに言った。 女性は「はぁ」と溜め息を吐いた。 「あなたに釣られる魚の気持ちが分かりますか?」 「えっ?どういう事ですか?」 「何もない釣り針に引っ掛かって釣り上げられるのと、豪華の餌を食べて吊り上げられるのと、どちらが良いと思いますか?」 浦島は、はっと気付かされた。 「そうだな、どうせ死ぬなら良いものを食べてから死にたいかもな…」 浦島は女性から海老を受け取った。 女性は餌を渡すと…。 「あなたは、いずれ良い思いをする事になるでしょう 海老で釣られない様にして下さいね」 そう言い残すと女性は海に飛び込んでしまった。 「あっ!」 浦島はすぐに海を覗き込んだが女性はどこにもいなかった。 浦島は受け取った海老で鯛を釣り上げました。 めでたし、めでたし。
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