【石に咲く花とたれ】

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 石畳の道を、馬車が通る。石畳の隙間から、白い花が生えていた。その花は、蹄と車輪に踏み潰されたが、それでもすぐにゆっくり立ち上がる。  翡翠草(ひすいそう)  リュミエール王国全土に群生する花。小さくて可憐な白い花を咲かせる。  季節も場所も問わずに咲き、踏まれても立ち上がり、抜かれても根を張り直す翡翠草。昔から“強さ”の象徴だった。  花言葉 ~恋から愛へ~  10年前。隣のノルト帝国で疫病が発生した。死者のうち、数人の家の庭には翡翠草が生えていたとして、ノルト王は翡翠草の駆除の命令を下した。  更に、隣の小国、リュミエール王国にも、翡翠草の駆除を命じた。リュミエール王国では、翡翠草が全土に群生したいるが、疫病は出ていない。それでもノルト帝国は、政治的な圧力までかけて駆除を強制した。  国中から、翡翠草が引き抜かれ、燃やされた。リュミエール王国帝都とノルト帝国を結ぶ道は、ノルト王の指示により舗装され、石畳が敷き詰められた。  しかし、これがノルト帝国の狙いだった。疫病を理由に道の鋪装を進める。整備された道は、軍道として機能する。リュミエール王国にかける軍事圧力を、増強させたのだ。  このままでは、ノルト帝国に国を奪われるのは時間の問題。そんな時、リュミエール王国 イザーク王は手を打った。  ノルト帝国を囲う周辺各国の貧困地へ、食料支援を進めたのだ。ノルト帝国を囲うように、強化された諸国関係で、ノルト帝国はリュミエール王国へ簡単に手が出せなくなった。  しかし、これにはリュミエール王国にも痛みが伴う。元々、農業が盛んで食料に恵まれた国であったが、無尽蔵ではない。周辺国への支援により、民の貧困化が進んだ。  
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