チャールズ

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「それ確かな情報?どこで聞いたの?野口くん」 「お釣りとしての受け渡しのときですよ。ほら、僕って千円札だから。お金の授受の場面多いじゃないですか。だから、レジを出て、財布に入るまでの間に聞こえたんですよね」 「ねえ、諭吉さんと英世さんはレジ派?財布派?」  聞いたことのない二択の質問が、なんの脈絡もなく一葉さんから飛び出た。「鉄板ネタだよね、その質問」と英世。  お札界では鉄板ネタなのね、と不覚にも吹き出しそうになった。 「僕は財布派かな」と諭吉。  そうなんだ、と同時に『なんで』が頭の中で広がる。その疑問に答えるように諭吉が口を開く。 「僕ってさ、お釣りにならないじゃん。だから、一度レジに入ってしまうと、ずっとあの暗闇の中で過ごすことになるんだよね。あとさ、レジのタイプによっては万札は小銭トレーの下に集められることあるんだよね。だからトレーに小銭が増えてくると、重くてイヤなんだよ」  僕はアルバイト先のレジの中を思い出す。たしかに、小銭トレーの下敷きになっている。 「私は、レジ派なのよね」と一葉。 「珍しいですね」と英世。どうやら、レジ派は少数派らしい。 「財布ってさ、長財布ならいいけど折りたたむタイプとか、たまにクリップタイプあるじゃない。折られるのはイヤなのよね、お札に折れ線が入るから。あとクリップは挟まれると痛い」  この話を聞くと、たしかに僕もレジ派に流れそうだ。だが、決断するには早い。英世さんの話しも聞いてから判断しよう。
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