思い出

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地元の者しか まず来ない 白い砂浜の海岸は貸し切りで あの子が貝殻をはしゃぎながら拾い 小さな手に持ったスーパーのビニール袋の中に 懸命に放りこんでいく間 波の音がかき消してくれるからと 俺が家を出て行く日を アイツと話し合っていた そしてもう二度と あの子に会うのはやめてくれと 揺るがぬ眼差しでアイツは言い 俺が渡せる僅かな金すらも 受け取りたくないとアイツは言う アイツが俺より愛してしまった誰かとの 新しい生活に 俺の影をチラつかせたくないという 身勝手な台詞に 俺は何も言い返す事ができぬまま 袋が貝殻で一杯になったあの子が呼ぶまでに 全てが決まった
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