妖精の揺蕩う森

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  「そろそろベルファンさんを助けに行こうと思うんですが……」  アイスクリンを楽しんでいるクラリスさんにお伺いを立てると、仕方がないとお許しを得た。  ただ、かなり頑丈なロープを使っているらしく、剣を持っていけとアドバイスを受ける。  一体、どんな格好になっているんだろう…… 百聞は一見にしかず。  服を着たまま男湯に入ると、ミノムシの様にグルグル巻きにされたベルファンさんが逆さまで風に揺れていた。 「大丈夫ですか? 血で頭が鬱血してなければいいんですけれど……」 「く、苦しいよエリオット君……! 早く僕を楽にしてくれないかな……!」 「楽にしてくれとか言ってんぞ。 早く息の根を止めてやったらどうでぇ?」 「そっちの ”楽” じゃないと思うよ?」 「ひぃっ!? 剣を片手に近付いてくるのは勘弁して欲しいなぁ!」 「仕方が無いじゃないですか、こんな太いロープで宙吊りになってるんですから」  見上げる高さの位置に、ベルファンさんの頭がある。  さぁてどうやって下へ降ろそうか……? 僕が頭を悩ましていると、 「メンドーくせぇなぁ。 ンなロープなんざスパッと斬って、脳天から落としゃいいじゃねーか」 「打ち所が悪いと死んじゃうでしょうが」 「で、出来るだけ優しくして欲しいなぁ……!」  ぶら下げられているロープに、もう一本長いロープを結び付けて、ゆるゆると降ろすしか……。  と思っていたら、ナコルが逆さのベルファンさんの足元まで飛び上がり、 「ガジガジ、ボリボリ」 「な、何をしているのかな、ナコル君!?」 「音を聞いて察しろや。 オメーを縛り上げてるロープを(かじ)ってんでぇ」 「それじゃ真っ逆さまじゃないか!」  ブチッ!  ゴン!  脳天から湯船に落ちたベルファンさんは暫くプカプカと湯に浮いていた。    ----
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