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辺りから音がすっかり消えて静まり返った深夜。
うつらうつらとしていた美々の側で、両親がひそひそと何事かを会話しているのが聞こえた。
無意識に、聞き取ろうと神経を集中させる。
「明日から自宅待機だって。多分、そのまま契約更新なしよ。どうしよう」
「そうか。こんなご時世だから覚悟はしてたけど……。工場も閉めることになっちゃったし、これからどうするかなぁ」
「貯金もそんなにあるわけじゃないし、いつまで持つか不安だわ。でも、何があっても美々だけはしっかり育てないと」
急に自分の名前が出てきたので、美々はぴくりと身じろぎした。
「そうだなぁ。僕らはお金がないのには慣れているけれど、美々を飢えさせるわけにはいかないもんな」
「うん。……私、在宅でできる仕事を探してみるわ。内職みたいなものかもしれないけど、やらないよりはマシだから」
「分かった。僕も明日知り合いのところを色々まわってみるよ」
そこで会話は途切れ、静寂が訪れた。二人とも眠りについたのだろう。
美々は逆に目が覚めてしまった。
細かい話までは分からなくても、10歳にもそれなりに大筋は理解できた。
両親はどうやらお金に困っているらしい――。
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