大切なあなた達に私ができる最高のこと

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 行く当ても考えも何もなかったが、美々は使命感に駆られて家を飛び出した。  どんなに小さな仕事でもいい。たくさん稼げなくたっていい。少しでも父と母の負担が軽くなるのなら。  美々は少し迷った後、母との散歩コースの途中にある商店街にへ向かう。  真っ青な青空の下、川沿いの土手を歩く。  陽の光が水面にキラキラ光るのを、美々はうっとりと見つめる。このままここで昼寝なんてしたら、とても気持ちいいだろう――。  そんなことを考えて、ハッと当初の目的を思い出した。  私は仕事を探しに行くのだ――。  開けた土手から駅の方へ向かえば、徐々に人の往来が多くなる。商店街を視界の先に捉えた。  美々は緊張で喉が渇くのを感じた。  ここに一人で来るのは初めてな上、今日はこれから一軒一軒店をまわって自分を雇ってもらう交渉をしなければならない。  入口のアーケードをくぐると、すぐ右手にコンビニが見える。さすがにここで仕事をするのは難しいと美々は理解している。交渉すべきは、母が懇意にしている八百屋や靴屋、洋菓子屋などの個人商店だ。  左右を注意深く見ながら歩いていると、目的地の一つである八百屋が見えた。母がよく雑談をする店主がいる。美々は駆け出した。  おじさん! あのね、私ここで――。   「お? 美々ちゃんじゃないか。未希子さんは?」    店主は真っ先に母をキョロキョロと探し出した。  美々が何と言おうか言い淀んでいると、 「一人なのかい? 未希子さんが心配するよ。ほら、おかえり」  あっさり客の相手をしに店内へ戻ってしまった。  美々はそれを追いかけることもできず、とぼとぼと店先から退散すると、再び歩き始めた。  すぐにうまくいくとは思っていなかったが、こうも素っ気なく追い返されてしまうとは。  ため息をつきながら靴屋を目指した。  八百屋の三軒先の靴屋では、高齢の男性が陳列された靴を整えているところだった。  店主のとのじいだ。殿山靴店だから、とのじい。近所の子供達はみんなそう呼んでいた。  とのじい、とのじい、あのね。   「おや、美々ちゃん。珍しいね。一人かい。どうしたの?」  あの、私をここで働かせてくれませんか!? お金がいるんです……! 「んー? 何だって?」  お金が必要だから、私をここで働かせてください! 何でもします!レジとかは無理だけど、お掃除とかなら――  そこまで言うと、美々の背後で甲高い笑い声があがった。
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