管理実験

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 まったく予期しなかったことが起こる。人生なんてそんなものだ。しかし、穂積奏斗を襲った予期せぬ出来事は、人生を丸ごと狂わせるものだった。  その日、奏斗はいつものように研究室にいた。四月の晴れ渡った日だった。それは晴れてここで助教として働き始めたばかりの頃でもあった。しかも大学院を出てすぐにそのポストを用意された期待の新人である。 「ううん」  しかし本人に期待の新人という自覚はなく、今日も寝癖だらけの頭をぼりぼりと掻きながらパソコンとにらめっこをしていた。 「ダメだ。どこかが間違っている」  パソコンの画面に映る数値に奏斗はさらに頭を掻く。身長180センチの細身の身体を折り曲げ、猫みたいに画面を睨みつけた。  実際に奏斗は猫のような人間だ。気分屋だし興味のないことには見向きもしない。周りからは顔はいいのに性格最悪という、ありがちなレッテルを貼られていた。それと同時に、大学時代は天才なんてあんなものかという諦めの目で見られていた。  そんな周囲の評価なんてどこ吹く風で、いつもどおり過ごしていた奏斗だが、その日常は唐突な訪問客によって破られた。 「穂積奏斗!」
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