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農園のポストに、ドライフラワーの花束が入れられていた。狼の獣人である青年は、呆れ気味に呟いた。
「またか」
その花束とポストに入っていたいくつかの手紙を手に取ると、農園近くにあるレンガ造りの家にそれを持ち帰った。
「おい、また来てたぞ」
花束を一緒に暮らす人間の少年の目の前に置いてやる。少年はその花束を手に取ると、可笑しそうに笑った。
「毎日情熱的だなー、彼女は」
「情熱的?花屋の若い夫婦が呪いの事で相談しに来て、そのお礼に夫婦が毎日飽きずに花束を持ってきてるだけだろ?」
そう獣人が首を傾げると、少年はやれやれと苦笑した。
「農園の人間なら植物全般を学ぶ事をおすすめする。女心を掴むなら、特に花言葉は役に立つぞ」
「そんな繊細な心俺にはねぇ。けど、その花束の花。何か意味あんのか?」
椅子にふんぞり返るようにどかっと座った彼に見えるように、少年は一本一本ドライフラワーを分けた。その一つを手に取って見せた。
「まずこれ。ヤドリギだ。花というか枝に近いな。これの花言葉を知っているか?」
「知らねぇよ」
コーヒーを淹れたマグカップを口に付けながら、獣人はぼんやりと話を聞いていた。
「私にキスして」
思わず獣人はコーヒーを吹き出した。その反応に、少年は予想通りの反応だとニヤついた。
むせながら、獣人は慌てて声を発した。
「待て!人妻だろあの女!それをお前に持ってきてるのか!?幼児趣味でもあんのか!?」
「とりあえず落ち着いてくれ。君が心配するような事では無いから。次にこれだ」
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