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 バデランの全貌がしだいに鮮明になってきた。  左右から流れる大気が衝突して、柱状の雲が立ち昇り、乱流と猛烈な渦巻きを生んでいた。黄土色と茶褐色の雲が分厚い層となり、幾重のも波状雲を形成していく。巨大な渦巻きとは巨大な渦巻きの狭間に、無数の稲妻が亀裂のように走るのが見える。  バデランの大気循環は、猛烈な台風を際限なく生んでいるのだ。  彼らはこれからくるであろう衝撃に備えた。  飛龍は言うなれば、星間を旅する船だった。  船の乗員は全部で十一。  蛾餓鬼族の戦士が九人。  棒族のヤゴ。  それに加えてイオタロウレイナ。    まもなくして、飛龍の咆哮が轟いた。  軋みが始まり、加速が加えられ、船内(・・)の壁に激しく押さえつけられた。中は暗く、戦士たちの姿がおぼろげに揺らいでいる。  イオタロウレイナは激しい震動に身をゆだねながら、これは故郷に帰るための第一歩だと思った。  空の穴から落ちてくる廃棄物の処理を、三千回、いやもっと気の遠くなるような回数をこなしてきた。当てのない日々の連続だった。  彼の元の姿は「白い宇宙の扉」に潜む神格だった。それがどんな姿をしていたのかは、覚えていない。  時間と空間と光を超越した座標軸外から押し寄せた虚数津波が、「白い宇宙の扉」を護る者を、あの廃棄物処理の惑星まで飛ばしたのだ。  本来の彼の姿は実体のないものだったが、気がつくと、奇妙で油脂の塊の怪物と化していたのだ。しかも「イオタロウレイナ」とかいう名称まで与えられて。  
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