プロローグ

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 ()の体内に埋め込まれた触覚は、時によって遠隔操作の役目もはたす。  小高い丘の向こうに()の棲み処がある。石と金属を組み合わせただけの四角い建造物。地面の突起物にしか見えないその建物の脇に、動物のように侍っている平たい黒い箱があった。箱には六個の車輪がついていた。  油脂質の醜悪な体から放たれた誘導波は、屋根のない平べったい箱の車輪を回転させた。簡素な型をした無蓋貨車だが、ぬかるんだ地表を走行するために、三車軸の車輪はどれも鉤状の凹凸で装甲されている。  地表を削る地響きをたてながら、無蓋貨車はゴロゴロと接近してきた。  荷台にはすでに先客が載っていた。  植物の枯れ枝を繋ぎあわせたような貧相な棒族である。背丈は低く、円形状の頭部はのっぺりしており、洞のように黒く窪んだ目を持っている。 この惑星の先住種族でもあった。 「よお。調子はどうだい?」  棒族はひゃらひゃらと甲高い声をだすと、体躯の線を折り曲げながら荷台から降りた。  棒族は散乱した壁蝨族の屍を見渡した。 「光る黄色い石の質は良さそうだ。骨の具合は・・・」棒族は骨を無造作に拾いあげ「こちらも問題ないな。飛龍殿も喜ぶだろう」そのまま、残渣(ざんさ)を荷台に放りこんだ。 (俺のごみ分別の仕事を邪魔するな)  ()は声にならぬ声をあげた。棒族のように直に発声はできないが、意思を伝達することはできる。 「まあ、そういうなよ。おいらだって、黄色い石のおこぼれくらい失敬しても、かまわねえだろ。イオタロウレイナ」
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